
猫を迎えてみたものの、「手を噛まれる」「家具で爪とぎされる」「夜中に鳴き続ける」といった困った行動に、戸惑っている方は多いのではないでしょうか。「しつけがうまくいっていないのかもしれない」「怒って分からせないといけないのでは」と、不安になってしまう方もいるかもしれません。
結論から言うと、猫のしつけで大切なのは、猫を犬のように「従わせる」ことではなく、猫の習性を理解したうえで、自然と良い行動を取りやすい環境を整えてあげることです。問題行動の多くには、猫なりの理由があります。
この記事では、初めて猫を飼う方に向けて、猫のしつけに対する正しい考え方から、噛みつき・爪とぎ・夜鳴きなど、よくある困った行動への具体的な対処法まで、7つに分けて解説していきます。
猫のしつけで大切な考え方
猫を「従わせる」のではなく習慣化を促す
犬のしつけは、指示に従わせる訓練の要素が強い一方、猫のしつけは少し性質が異なります。猫は犬とは異なり、指示に従わせるよりも環境を整えることが重要で、力で押さえつけようとしても、うまくいかないことがほとんどです。
そのため、猫のしつけでは「命令に従わせる」のではなく、「猫にとって好ましい行動を取りやすい環境を用意する」という考え方が基本になります。例えば、爪とぎ用品を適切な場所に置く、噛みつきたくなる欲求をおもちゃで発散させるなど、環境側を工夫することが、結果的に問題行動の軽減につながります。
問題行動には必ず理由がある
噛む、鳴く、爪とぎをするといった行動は、猫にとっては自然な習性であることがほとんどです。ストレス、退屈、狩猟本能、要求など、行動の裏には何らかの理由があります。
「なぜこの行動をするのだろう」と理由を考える視点を持つことが、しつけの第一歩です。理由が分かれば、それに合った対処法も見えてきます。
猫のしつけでやってはいけないNG対応

具体的な対処法の前に、初心者がやってしまいがちなNG対応を紹介しておきます。
大声で怒る
猫が問題行動を取ったときに、大声で怒鳴ってしまうという方は少なくありません。しかし、猫は「なぜ怒られているのか」を人間のようには理解できないといわれています。大声はただ猫を怖がらせるだけで、飼い主への警戒心が強まってしまうこともあります。
無理に押さえつける・叩く
体を押さえつけたり、叩いたりする対応も避けるべきです。痛みや恐怖による学習は、行動そのものをやめさせる効果が薄いうえ、飼い主との信頼関係を損なう原因になります。
猫の習性を無視した対応
「爪とぎは絶対にさせない」「鳴いたら無視すればいい」など、猫の本能的な行動そのものを完全に否定しようとする対応も、うまくいかないことが多いです。行動自体をなくすのではなく、行動する場所や対象を、好ましい方向に誘導するという発想が大切です。
猫の困った行動への対処法7選
ここからは、初心者が特に悩みやすい7つの行動について、具体的な対処法を紹介します。
1. 噛みつき・甘噛みへの対処法
遊んでいる最中に、手や指を甘噛みされて困っている方は多いのではないでしょうか。子猫の時期は特に、狩猟本能の延長で、動くものに噛みつく行動が多く見られます。
対処法としては、まず手や指を直接おもちゃ代わりにしないことが大切です。手で遊ぶ習慣がついてしまうと、噛むこと自体を「遊び」として覚えてしまいます。ねこじゃらしなど、手から離れた場所で使えるおもちゃに切り替え、噛みたい欲求をそちらで発散させてあげましょう。噛まれたときは、大きな声を出さず、そっと手を引いて遊びを中断するという対応を繰り返すことで、「噛むと遊びが終わる」ということを少しずつ学んでいくといわれています。
2. 家具での爪とぎへの対処法
爪とぎは、猫にとって本能的な行動です。爪の古い層を取り除いたり、気持ちを落ち着けたりする役割があるといわれており、完全にやめさせることは難しいと考えられます。
対処法としては、専用の爪とぎを、猫がよく過ごす場所や、家具で爪とぎをしていた場所の近くに設置することが効果的です。段ボール製、麻製、木製など素材の好みは猫によって異なるため、いくつか試してみるとよいでしょう。家具を保護したい場合は、爪とぎ防止シートを併用するのもひとつの方法です。
猫用爪とぎの種類や選び方については、「猫用爪とぎのおすすめ7選」で詳しく紹介しています。
3. 夜鳴きへの対処法
夜中や早朝に鳴き続けて困っている、という声もよく聞かれます。猫はもともと薄明薄暮性(夜明けや夕暮れ時に活発になる性質)を持つ動物ともいわれ、人間の生活リズムとずれやすい面があります。
対処法としては、寝る前にしっかり遊んで体力を使わせておくことが効果的とされています。日中に十分な運動や遊びの時間を確保し、生活リズムを少しずつ人間の時間に近づけていくイメージです。鳴いたときにすぐ構ってしまうと、「鳴けば構ってもらえる」と学習してしまうこともあるため、心配な気持ちはありつつも、むやみに反応しすぎないことも大切です。ただし、急に鳴き方が変わった場合や、痛がっている、元気がないなどの変化がある場合は、単なる要求鳴きと決めつけず、体調面も確認しましょう。
猫の夜鳴きの原因や、やってはいけない対応については、「猫の夜鳴きはなぜ?原因と対策、やってはいけない対応を初心者向けに解説」でも詳しく解説しています。
4. いたずら・物を落とす行動への対処法
物を落とす、コードをかじる、棚に登るといった、いわゆる「いたずら」も、初心者が悩みやすいポイントです。これらの多くは、好奇心や退屈、狩猟本能からくる自然な行動と考えられています。
対処法としては、まず誤飲や怪我につながりそうな危険なものを片付け、コード類はカバーでまとめておくことが基本です。そのうえで、キャットタワーや知育玩具を用意し、猫の好奇心やエネルギーを、安全な形で発散できる環境を作ってあげましょう。
5. トイレの失敗への対処法
トイレ以外の場所で排泄してしまう、いわゆる「トイレの失敗」も、多くの飼い主が経験する悩みです。原因としては、トイレの汚れ、サイズの不一致、設置場所の落ち着かなさ、猫砂の好みが合わないことなどが考えられます。
対処法としては、まずトイレをこまめに掃除し、清潔な状態を保つことが基本です。サイズが体に合っているか、静かで落ち着ける場所に設置されているかも見直してみましょう。改善が見られない場合や、頻尿・血尿など普段と違う様子がある場合は、体調面が関係している可能性も考えられるため、動物病院への相談を検討してください。
6. 大声で鳴く・要求鳴きへの対処法
ご飯やおやつを欲しがって、大きな声で鳴き続ける「要求鳴き」に悩む方も少なくありません。
対処法としては、鳴いたらすぐに要求に応じるのではなく、落ち着いたタイミングで対応することを意識してみましょう。鳴くたびに反応してしまうと、「鳴けば要求が通る」という学習が強化されてしまう可能性があります。決まった時間にご飯を与える、遊びの時間を確保するなど、生活リズムを整えることも、要求鳴きの軽減につながるといわれています。
7. 抱っこや接触を嫌がる場合の対処法
「なかなか懐いてくれない」「抱っこを嫌がる」という悩みも、初心者にはよくあるものです。猫の性格には大きな個体差があり、人懐っこい子もいれば、距離を置きたがる子もいます。
対処法としては、無理に触ろうとせず、猫のほうから近づいてくるのを待つ姿勢が基本です。焦らず、猫のペースに合わせて少しずつ距離を縮めていくことで、時間はかかっても信頼関係は築かれていくといわれています。
良い対応と悪い対応の比較
ここまで紹介した内容を、良い対応と悪い対応という形で整理してみます。
| 場面 | 悪い対応 | 良い対応 |
| 噛まれたとき | 大声で叱る、手で叩く | そっと手を引き、遊びを中断する |
| 爪とぎされたとき | 怒鳴る、無理に引き離す | 爪とぎ用品を近くに設置する |
| 夜鳴きしたとき | すぐに構う、怒る | 日中にしっかり遊ばせて様子を見る |
| 要求鳴きのとき | 鳴くたびに応じる | 落ち着いたタイミングで対応する |
このように、問題行動そのものを叱るのではなく、行動の原因に働きかける対応のほうが、長期的には猫との関係を良好に保ちやすいといわれています。
猫との暮らしで困らないために準備したいもの

困った行動への対処には、環境づくりを助けてくれる用品を取り入れるのも効果的です。
噛みつきや甘噛みが気になる場合は、猫用おもちゃで遊びの時間を増やし、噛みたい欲求を発散させてあげましょう。爪とぎ対策には、爪とぎ用品を複数箇所に用意しておくと安心です。いたずらや運動不足が気になる場合は、キャットタワーや知育玩具を取り入れることで、猫が安全にエネルギーを発散できる環境を作れます。留守番中の様子や、夜間の行動が気になる方は、ペットカメラを活用すれば、離れた場所からでも猫の様子を確認できます。
こうした用品は、必ずしもすべてをそろえる必要はありません。今悩んでいることに合わせて、必要なものから検討してみるとよいでしょう。猫を迎える前の基本的な準備については、「猫を初めて飼う前に準備しておきたいもの10選」でも詳しく紹介しています。
子猫と成猫でしつけの違いはある?
子猫は、好奇心が強く、遊びの中でさまざまな行動を覚えていく時期です。甘噛みなどの行動も、この時期に「噛んでいいもの」と「いけないもの」を、遊びを通して少しずつ伝えていくことが大切です。
成猫の場合は、すでに習慣化された行動を変えるのに、子猫よりも時間がかかることがあります。とはいえ、対処の基本的な考え方は同じで、行動の原因を理解し、環境を整えていくことで、少しずつ変化していくといわれています。焦らず、猫のペースに合わせて取り組んでいきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 猫を叩いてしつけてもいいですか?
A.叩くことはおすすめできません。
恐怖による学習は、問題行動そのものの解決にはつながりにくく、飼い主との信頼関係を損なう可能性があります。行動の原因に働きかける対応を基本にしましょう。
Q2. しつけはいつから始めればいいですか?
A.迎えたその日から、環境を整えることは始められます。
ただし、迎えたばかりの時期は、しつけよりもまず新しい環境に慣れてもらうことを優先しましょう。迎えた初日の過ごし方については、「猫を迎えた初日にやること7選」も参考にしてください。
Q3. トイレの失敗が続く場合はどうすればいいですか?
A.トイレ本体や置き場所、猫砂の相性を見直すことで改善するケースも多くあります。
トイレの選び方については「猫トイレの選び方」、猫砂の選び方については「猫砂の選び方」でそれぞれ詳しく解説しています。改善が見られない場合は、動物病院への相談も検討しましょう。
Q4. 何度言っても分かってくれないのですが、諦めるべきですか?
A.猫のしつけは、犬のように短期間で完璧に行動を変えることを目指すものではありません。
少しずつ、環境や接し方を調整しながら、長い目で向き合っていくことが大切です。うまくいかない日があっても、焦らず続けていきましょう。
まとめ
猫のしつけで大切なのは、力で従わせることではなく、猫の習性を理解し、自然と良い行動を取りやすい環境を整えてあげることです。噛みつき、爪とぎ、夜鳴き、いたずら、トイレの失敗といった困った行動にも、それぞれ理由があり、原因に合わせた対処法があります。
大声で怒ったり、無理に押さえつけたりする対応は避け、猫のペースを尊重しながら、少しずつ環境や接し方を整えていきましょう。日々の困りごとと向き合いながら、猫との暮らしをより快適なものにしていってください。初心者が知っておきたいその他の注意点については、「初めて猫を飼う人必見!注意点10選」もあわせて参考にしてください。
